日本固有の文化である畳は、日本の気候や風土に最適な床材です。ところで、畳は室内の快適性に大いに役立つこと、地域によって大きさが異なることをご存じでしたか?畳の大きさは部屋の広さをあらわす単位として利用するため、住まいが変わる際に知っておくと役立ちます。
本記事では、畳の構造や素材、地域別の大きさ、特徴、長持ちさせるコツなどを解説します。記事の後半ではお手入れ方法などの役立つ情報も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
畳とは?日本人なら知っておきたい基礎知識
畳は古くから日本人の生活に根づき、愛されてきた伝統的な床材です。現存する日本最古の歴史書『古事記』に登場していることからも、古くから使われてきたことがわかります。
もともとは平安時代の貴族の屋敷で板の間の上に敷く敷物として用いられており、身分や富の象徴とされていました。畳が一般化したのは江戸時代のことで、部屋中に敷き詰める現在と同じ形で庶民の間にも広まりました。
畳は貴人の館から庶民の長屋まで、さまざまな場所で利用され、時代の流れや風土、文化に合わせて徐々に進化して今日の畳となったのです。
中国から伝わったものが多い日本文化ですが、イ草を使った畳という床材は日本固有の文化です。ソファやベッドを用いる西洋の生活スタイルが浸透してもなお、畳がなくならないのは、日本人にとって畳の心地良さが特別なものといえるからでしょう。
畳の構造~各部位の名称と役割
畳は、畳表(たたみおもて)・畳床(たたみとこ)・畳縁(たたみべり)の3つのパーツに分かれます。
・畳表(たたみおもて)
畳表は、イ草で織られた表面のゴザの部分です。近年は、イ草よりも耐久性に優れた化学繊維やパルプを使用した畳表も普及しています。
畳表の役割は、イ草による保温効果や除湿効果、空気の清浄作用などが挙げられます。
・畳床(たたみとこ)
畳床は畳の中心の芯となる部分で、畳の踏み心地にかかわる部位です。古くは、乾燥藁(わら)を糸締めして何層にも重ね、圧縮する形で作られていましたが、現在ではポリスチレンフォームや畳ボードなどを、用途によって使い分けるケースも多くなっています。
畳床は、弾力性や保温性、断熱性、吸湿性などに優れており、畳の機能をつかさどる部位といえるでしょう。
・畳縁(たたみべり)
畳縁とは、畳の側面にある布生地の部分で、畳を保護する役割をもちます。使われる布生地は色や柄がさまざまあり、部屋の雰囲気を変えることも可能です。
畳の素材~各部位に使われている材料
畳の品質を左右するのは、畳表・畳床・畳縁で使われる素材や材料の違いです。ここでは、畳の素材や材料を部位ごとに紹介します。
畳表の素材・材料
イ草を使用した伝統的な畳の場合、畳表にはイ草が使われています。イ草の独特な肌触りや色、香りを好む方は多く、クッション性や調湿作用、リラックス効果なども期待できます。
天然素材のイ草以外には、和紙を使用した「和紙表」、樹脂を使用した「樹脂表」などが人気です。イ草のような風合いや香りはありませんが、耐久性などの機能に優れ、洋室に合うデザインもあります。
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畳の素材・材料をパーツごとに紹介!産地による価格の違いも解説
畳床の素材・材料
畳床には、藁(わら)を使用した「本畳床」、藁と発泡スチロールを使用した「ワラサンド畳床」、発泡スチロールと木材チップを使用した「建材床」があります。
畳床の素材によって、断熱性や保湿性、踏み心地などが変わります。それぞれの特徴については、以下の記事を併せてご覧ください。
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畳床(たたみどこ)の種類5選!素材別の特徴を解説
畳縁の素材・材料
畳縁の素材は、綿や麻、化学繊維(ポリエステル・ポリプロピレンなど)です。綿や麻の畳縁は、滑らかな手触りや高級感が魅力です。化学繊維の畳縁は、耐久性を重視したい方、おしゃれな色柄をお探しの方におすすめします。
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畳縁(たたみべり)とは?選び方のポイントや「踏んではいけない」とされる理由を解説
畳のサイズ~種類別の大きさ(寸法)
地方から上京すると部屋の大きさが違うと感じるのは、畳のサイズが影響しているためです。代表的な地域別の畳のサイズである、以下の4種類について見ていきましょう。
京間(きょうま)
京間は、京都や関西地方、中国地方、九州地方などで用いられており、本間(ほんま)、本間間(ほんけんま)とも呼ばれています。サイズは「191cm×95.5cm」と、4種類のなかで最も大きいのが特徴です。
中京間(ちゅうきょうま)
中京間は「182cm×91cm」と、京間の次に大きいサイズです。三六間(さぶろくま)とも呼ばれ、おもに愛知、岐阜などの中京地区、福島、山形の東北地方、北陸地方の一部、奄美大島など、日本各地で用いられています。
江戸間(えどま)
江戸間は五八間(ごはちま)、関東間(かんとうま)とも呼ばれ、全国的な標準規格として、関東地方や東北地方、北海道で用いられています。サイズは「176cm×88cm」と中京間によりもさらに小さくなります。
団地間(だんちま)
団地間とは五六間(ごろくま)とも呼ばれ、おもに公団住宅、アパート、マンションなどで用いられています。サイズは「170cm×85cm」と、4種類のなかで最も小さいのが特徴です。
このように、地域によって畳の大きさが異なりますが、「丈と幅の比率が約2:1」という点は変わりません。
畳がもつ5つの特徴~日本の風土・生活に最適
畳が日本固有の文化として根づいているのは、日本の風土や気候、暮らし方に適しているためです。そこで、ここでは畳がもつ5つの特徴を紹介します。
畳の特徴(1)高い断熱性と保温性がある
畳床は通常5~6㎝ほどの厚みがあり、床下の冷たい空気を遮断する効果に優れています。畳床そのものに空気が含まれるため、室内の熱を逃さない保温性も特徴です。夏は涼しく、冬は暖かく過ごせることで、冷暖房効果が高まって省エネにつながるでしょう。
畳の特徴(2)優れた吸湿能力と調湿機能がある
畳1帖でおよそ500mlの水分を吸収する働きがあり、高温多湿な日本の気候に適しています。畳床がスポンジの役割を果たして水分を吸収するため、梅雨時などは湿気を吸収し、乾燥する冬場は水分を放出します。蒸し暑い夏や乾燥する冬でも快適に過ごせるのは、畳の吸湿能力と調湿機能によるものです。
畳の特徴(3)適度な弾力で座り心地が良い
畳表のイ草は構造的に空気を含みやすく、適度な弾力を生み出します。この弾力性のおかげで、畳はクッションのように座り心地が良く、かつ転倒時に体への衝撃を和らげるメリットがあります。
畳の特徴(4)自然の優しい色・匂いでリラックス効果がある
畳の淡い自然な緑色は目に優しく、心の安らぎと落ち着きを与えてくれます。さらに、天然のイ草のすがすがしい香りには、高いリラックス効果と鎮痛効果が証明されているのです。
東大工学部の研究によると、イ草は人体に悪影響を及ぼす二酸化窒素や化学物質を吸着し、室内の空気を浄化する作用があることがわかりました。イ草の畳は、心身ともに健康に過ごせる環境を生み出してくれるといえるでしょう。
畳の特徴(5)吸音・遮音効果がある
畳の部屋で感じる独特の静けさは、畳がもつ吸音・遮音効果によるものです。また、空気をたくさん含んだ畳は適度な弾力があるため、歩く音や振動が響きにくくなります。特に、階下に音が伝わりやすいマンションなどの集合住宅では、畳の吸音・遮音効果が騒音防止に役立つでしょう。
畳を敷く際のポイント
畳を上げて掃除をしたあと、どのように敷かれていたかを忘れてしまい、困った経験がある方もいるのではないでしょうか。
畳の敷き方には、縁起が良いとされる「祝儀敷き」と、縁起が悪いときに用いられる「不祝儀敷き」の2パターンがあります。まずはこの基本の敷き方とルールを覚えて、そこから部屋のサイズに合わせて敷き方を考えていきましょう。
こちらの記事では、3畳間から12畳間まで、畳の敷き方の具体例を図で解説しています。
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畳の敷き方にもルールがある!具体例を広さ別に紹介
畳を長持ちさせる6つのコツとは?
畳の寿命は、日頃のお手入れの仕方によって大きく変わってきます。ここでは、畳をできるだけ長持ちさせるコツを一つずつチェックしていきましょう。
こまめに掃除をする
イ草で編まれた畳は、隙間にゴミやホコリが溜まりやすいものです。ゴミやホコリはダニが発生する原因となるため、こまめに掃除しましょう。
掃除機や箒でゴミやホコリを取り除くとき、雑巾で表面の汚れを拭き取るときは、畳の目に沿わせる形で行ないます。雑巾がけは、乾拭きか固く絞ったものを使用してください。
部屋の空気を定期的に入れ替える
畳には、空気中の水分を吸い取ったり放出したりしながら、室内の湿度を調整する働きがあります。高温多湿の日本では重宝される床材ですが、気密性の高い住宅においては、湿気を溜めこみやすいのが難点です。
畳は湿気に弱くカビやすいため、湿度が上がりすぎないように、こまめに部屋の空気を循環させましょう。部屋の出入りがない場合も、ときどき窓を開けて換気をすることが大切です。
加湿器・除湿機を上手に使う
部屋の湿度調整がうまくいかないときは、加湿器・除湿機を活用しましょう。湿度は高すぎても低すぎても良くありません。湿度計の数値を確認しながら、40~60%となるように調節してください。
冬に加湿器を使う際は、窓ガラスの結露に注意が必要です。結露防止シート、スプレー、吸水テープなど、結露対策グッズを活用するのがおすすめです。梅雨の時期や閉め切った部屋には、除湿機を使用します。夏場のクーラーも結露の原因となるため、こまめに窓ガラスの状態を確認しておくことが大事です。
カーペットを畳の上に敷かない
畳にカーペットを敷いたままにすると、通気性が悪くなってカビ・ダニが発生してしまいます。畳をできるだけ長く使用したいなら、畳には敷物を使わないほうがよいでしょう。同様に、布団の敷きっぱなしも避けたほうが賢明です。
直射日光を避ける
窓からの直射日光は、畳表の変色を引き起こします。カーペットなどを敷いている場合は、日焼けの跡が残らないよう気を付けてください。
また、ダニ発生を防ぐには、畳を定期的に干して乾燥させることが大切です。ただし、直射日光による変色を避けるため、天日干しは避けましょう。
裏返し・表替えを行なう
「畳の表面が傷んできた」「色が褪せてきた」という場合は、畳表をひっくり返して使用する「裏返し」、畳表・畳縁を新品に交換する「表変え」で対処します。ただし劣化の程度によっては、畳を丸ごと交換する「新調」が必要です。
裏返し・表替えで対処できるのか、新調すべきなのかわからないときは、専門店に相談すると安心です。「張り替え作業の負担を少なくしたい」「すぐに対処してほしい」という場合も、プロの手を借りたほうがよいでしょう。
意外と簡単!畳のお手入れ・掃除方法まとめ
「和室のある暮らしに憧れてはいるものの、掃除が大変そう……」と考える方も多いのではないでしょうか。しかし、畳のお手入れ・掃除はコツさえ覚えてしまえば意外と簡単です。
ここでは、日常生活に役立つ畳のお手入れ・掃除方法を紹介した記事をまとめました。
畳のお手入れ・掃除方法【基本編】
以下の記事では、畳をより長持ちさせるための基本の掃除方法を紹介しています。畳の掃除で覚えておきたい大原則についても説明していますので、畳の部屋がある方は必見です。
また、畳にカビやダニが発生してしまったとき、液体をこぼしてしまったときなど、緊急事態の対処方法も解説しています。
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畳の掃除の仕方、カビ・ダニの取り方を解説!クエン酸や重曹は使える?
畳のお手入れ・掃除方法【外し方編】
畳の裏側を掃除したいと思ったら、畳を外すことから始めなくてはなりません。この記事では、畳をスムーズに外すために必要な6つの道具、畳を外す手順や外したあとのメンテナンスについて説明しています。
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畳の外し方とは?具体的手順と必要アイテム、手入れのコツなどについて紹介
畳のお手入れ・掃除方法【シミ取り編】
こちらの記事では、畳のシミ取り方法について種類別に紹介しています。
畳のシミといっても、ジュースや醤油、インク、ペットのおしっこ、灯油、クレヨンなど汚れの種類によって対処法はさまざまです。間違った方法でシミ取りをしてしまうと、かえって状態がひどくなってしまうことがあるので気を付けましょう。
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【保存版】畳のシミ取り方法!種類別の汚れの落とし方を詳しく紹介
畳のお手入れ・掃除方法【へこみ編】
「畳が家具の重みでへこんでしまった」「たわんで踏み心地が悪くなってしまった」という場合には、簡単にできる応急処置で対応してみましょう。
天然のイ草を使用した畳に関しては、濡れタオル・アイロン・ドライヤーの3つの道具をうまく使うことによって、へこみを直すことができます。100均グッズで簡単にできる対処法についても紹介しますので、ぜひ活用してみてください。
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畳のへこみを防止するには?今あるへこみの直し方も併せて紹介
こんなときはどうする?畳のトラブル解決法まとめ
天然素材でできた畳は、扱い方を間違えると、臭いやカビ、虫が発生してしまうおそれがあります。ここでは、畳にまつわるトラブルの対処法と予防法をまとめた記事を紹介します。
畳のトラブル解決法【臭い編】
こちらの記事では、カビ臭やペットの尿の臭い、たばこ臭など畳で発生する臭いについて、原因別の臭い撃退法を解説しています。畳の臭いが消えずにお困りの方は、ぜひご一読ください。
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畳の嫌な臭いを消すには?原因別の対策4選を紹介します
畳のトラブル解決法【カビ編】
湿気の多い梅雨の時期には、カビの発生が気になる方も多いのではないでしょうか。カビは、4つの発生要件がそろうと発生する可能性が高まります。
ただし、畳にカビが発生しても正しく対処すれば問題はありません。こちらの記事で、予防法を理解して畳の状態を快適に保ちましょう。
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畳の簡単カビ取り方法、掃除方法をケース別に紹介!カビの予防法6選も解説
畳のトラブル解決法【虫編】
畳に寝転がるのは非常に気持ちが良いものですが、天然素材でできた畳には虫が発生することもあるため、注意が必要です。畳に虫を繁殖させないためにも、虫が発生する原因をしっかりと理解しておきましょう。
こちらの記事では、畳に発生する虫の種類や効果的な予防方法、虫が発生してしまったときの対処法について解説しています。
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畳に虫が発生!原因と虫の種類、駆除方法、予防法などを解説
畳の張り替え、メンテナンスに関するお役立ち情報まとめ
畳の寿命を延ばすには日頃のケアが大切です。ここでは、畳のメンテナンス・新調に関するお役立ち情報をまとめた記事を紹介します。
畳のメンテナンス【基礎知識編】
畳の張り替えには3つの方法(裏返し・表替え・新調)があり、畳の状態に合わせて適切な方法を選ぶ必要があります。
畳に関するお悩みも、張り替えによって解決できるかもしれません。以下の記事では、張り替えのタイミングや費用の目安について詳しく説明しています。
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畳(たたみ)の張り替えの費用・タイミングとは?悩み別のおすすめ方法も紹介
畳のメンテナンス【裏返し編】
畳のメンテナンス方法の一つとして挙げられるのが、裏返しです。畳のパーツのなかで最も傷みやすいのは畳表ですが、これを裏返すことで、畳表面を新品に近い状態に戻すことができます。
畳の裏返しは自分でDIYできるのか、施工業者に依頼する場合の費用相場はどれくらいなのか、といった内容について知りたい方は、以下の記事をご一読ください。
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畳の裏返しとは?方法と目安時期、施工費用の相場を解説します
畳のメンテナンス【寿命・新調編】
畳には寿命があり、畳表と畳床のそれぞれで交換時期の目安が異なります。単に使用年数だけで判断するのではなく、畳の品質、住宅環境、メンテナンスの程度などさまざまな要因を考慮して判断しましょう。
こちらの記事では、畳の色や風合い、感触、手入れ状況による寿命の判断方法、寿命を延ばす3つのコツについて説明しています。
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畳の寿命は何年?部位ごとの目安と判断方法、寿命を延ばすコツを紹介
畳のメンテナンスはとりまつ畳にお任せください
畳は日本固有の文化であり、日本の気候や生活様式に合った床材です。畳表には、イ草の吸湿効果や保温効果、香りによるリラックス効果、空気の浄化効果などがあります。
畳床は、乾燥藁の吸湿・放湿による湿度の調整、空気を含むことによる吸音・遮音効果など、快適に過ごせる機能を担います。フローリングが普及している現代こそ、畳がもつ機能はメリットが大きいと感じられるでしょう。
しかし、畳は経年劣化にともない、色褪せやイ草のささくれが起こります。畳を気持ち良く使い続けるためには、裏返しや張り替え、新調など、状態に応じたメンテナンスが必要です。
とりまつ畳は張り替えなどのメンテナンスを100%自社施工で行なうことで、高品質・低価格を実現します。畳表のラインナップも多彩で、好みの畳に変えることも可能です。
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